東京電力福島第１原子力発電所の処理水海洋放出について韓国原子力学会は、韓国国民の健康と海洋環境に影響を及ぼさないことを、声明文で明らかにした。原子力分野で韓国最高の権威ある同学会によって、科学的に結論付けられた形となった。同学会はこれに加え、海洋放出反対派に対しては、公開討論を提案している。今後、尹錫悦政権は根強い反対派に対する説得のための努力が求められる。一方、在日経済人の間では、農水産物禁輸解除に期待する声が上がっている。

　韓国原子力学会は、「事故発生後から原因を分析し、汚染水管理を含む廃炉作業の進展状況を検討してきた。実証的資料と多様な科学的分析によると、福島原発で処理された水が放出されても、韓国国民は安心して食生活を営むことができる」としている。
そのうえで「感情的、道徳的、経済的、国際政治的観点から放水に反対することはできるだろう」としながら、「科学的な事実を公開の場で捻じ曲げて、過度な恐怖を助長することは韓国の水産業界と関連飲食業界の被害を自ら大きくする行為になるだろう」と危惧を示した。
最大野党「共に民主党」などの放出反対派を念頭に、「一部の人による過度な恐怖ビジネスが続いている」と批判し、「科学的判断と大きく異なった主張に対しては公開討論を提案する」としている。
処理水放出問題について「共に民主党」を中心とした野党側は反日感情を煽り、韓日交流を進める尹政権を揺さぶる政争の道具として利用している。
こうした主張は社会生活にも影響を及ぼしている。韓国では処理水放出が迫っているとの懸念から、塩の価格が高騰。韓国農水産食品流通公社調べで、粗塩の小売価格が平年比で７０％上昇している。ソウル市内のスーパーでは、商品棚から塩が消えた店舗もある。
処理水放出については韓国世論の拒否感が強い。読売新聞と韓国日報の共同世論調査によると、海洋放出について韓国では８４％が反対している。一方で、日本は６０％が賛成だった。
日本国内では賛成が過半数を超え、一定の理解を得たかのようにみえるが、全国漁業協同組合連合会（全漁連）は２２日、４年連続４回目の特別決議として放出「反対」を採択した。しかし今回新たに、政府が漁業者への支援策として打ち出した５００億円規模の基金について「重く受け止める」と評価している。
韓日両国の事情や利害関係がさまざまに絡み合い、放出決定までには関係者の一層の努力が欠かせない。
それでも科学的お墨付きを得たことで、日本の経済界では前向きな反応がみられる。
神奈川韓国青年商工会の李忠俊会長は「経済人として、まず経済交流から韓日関係を盛り立てていきたい。特定地域の農水産物禁輸が解除されて交易が活発になったら、日本の商品を思いっきり売り込みたい。日本ブームを起こすつもりでやりたい」と目の前に広がるビジネスチャンスを見据えている。

塩が完売したソウル市内のスーパー