半導体をめぐる国家間の競争が激しくなるなか、韓国の産業技術が国外企業に流出する事例が増加している。技術流出と引き換えに多額の報酬を受けとるなどの不正行為が増大、サムスン電子元常務が国家核心技術である半導体設計資料を不正に持ち出すなどの不法行為も発覚した。

　水原地検防衛事業・産業技術犯罪捜査部は１２日、サムスン電子の営業機密であり、国家核心技術である半導体工場の設計資料を中国に持ち出し、不正に使用した産業技術保護法違反容疑などでサムスン電子の元常務を拘束起訴し、共犯者６人を同じ容疑で拘束起訴した。サムスン電子が技術流出で受けた被害は３０００億ウォンから最大数兆ウォンに達するとされる。
元常務らはサムスン電子の中国・西安工場からわずか１・５キロメートル離れた場所に西安工場を模した「複製版工場」を建設する計画を立てていた。
検察によると、元常務は中国・台湾の資本を誘致し、中国に二つの会社を設立した後、サムスン電子とＳＫハイニックスの従業員２００人余りを高額の給与で採用した。さらにサムスン電子の技術機密である半導体工場のＢＥＤ（半導体クリーンルーム最適化技術）、工程配置図、設計図を盗用した疑惑を持たれている。
半導体など最先端技術をめぐる国家間、企業間の競争が激化するなか、韓国の先端産業の技術流出は深刻な状況となっている。先ごろ、中国の情報通信企業に転職し、会社の技術流出と引き換えに数億ウォンを受け取った韓国国籍の従業員など産業技術流出犯７７人が警察に逮捕された。この件に付随し警察庁国家捜査本部は３カ月間、このような産業技術流出など経済安保危害犯罪を取り締まった結果、３５件を摘発したと明らかにしている。今回の取り締まりで摘発された事件のほとんどは国内企業間の技術流出事件だが、中国など海外技術流出事件は８件で、昨年同期より倍増しているとした。韓国企業は長い間、多くの資金と人材を投資して先端技術を育んできた。これまでも最先端分野では後進国であった中国などへの技術流出が問題だった。近年、中国の競争力が高まり、韓国を追い越す分野も多くなったが、それでも技術流出が減少することはないようだ。
さらに最近、大きな問題となっているのが先進国までが韓国の半導体やバッテリー技術に着目していることだ。米国は半導体の補助金支給の条件として、技術の開示を求めるなど合法的な手段で韓国企業の最先端技術を得ようとしている。今後、海外現地法人で働く韓国人人材に良い条件を提示し、技術や人材を取り込もうとするケースも増える可能性が高い。韓国企業も、以前は半導体分野などで日本人技術者の引き抜きを行ってきた。現代自動車は欧米トップ自動車メーカーのデザイナーを引き抜くなどしてきた。
人材確保のための国境を超えた戦いが今後、過熱すると予想される。