4年ぶりに行動制限のない大型連休となり、行楽地は多くの観光客でにぎわいを見せた。今年のゴールデンウイーク期間中には岸田文雄首相が訪韓し、尹錫悦大統領と首脳会談を行った。韓日関係改善による経済効果から、飲食・観光業界では前向きな姿勢が見られる。コロナ対応の5類移行も重なり、日常生活の回復に向けた機運が盛り上がっている。
| 大型連休でにぎわいをみせる韓国関連店舗が軒を連ねる東京・新大久保 | 平日を挟んで最大9連休となった今年のGWは、コロナ禍の収束がみえたことで2019年以来、4年ぶりに行動制限のない大型連休となり、各行楽地は観光客で賑わった。韓国関連の店舗が多く集まり、コリアンタウンとして注目されている東京都新宿区の大久保・新大久保地区でも、コロナによる事業の落ち込みから反転攻勢に出ようとしている。GW期間中に岸田首相が訪韓し、尹大統領と会談を持ったことも、韓日関係改善に寄与し、経済活性化への追い風になると見込まれている。
新大久保のほか、大阪・名古屋で韓国コスメや雑貨などを販売する5店舗を運営する韓流百貨店は「昨年と比べて来客数が増えるとともに、売上高も10~20%増加した」と満足気だ。GW期間中は天候に恵まれなかったが「晴天であればもっと上乗せできただろう」と若干くやしさもにじませる。新大久保の飲食店経営者も「来客数が増えただけでなく、行き交う人で通りも賑わい、コロナ前の休日を思わせるようだった」と表情を綻ばせた。
8日から新型コロナウイルス感染症の法的位置付けが5類に移行したことで、以前のような日常生活が戻り、飲食店や観光業界を中心に活気付くことが期待される。
海外旅行に関しては、日本への入国時に有効なワクチン接種証明書か、出国前検査証明書の提示が必要だったが、5類移行の一足先に先月29日から不要となった。
■観光活性化に望み
訪韓日本人ツアーを扱う旅行代理店、サントラベルを大久保駅近くで経営する金仁源社長は「コロナ前と比べて、まだ8割ほどしか戻っていない」と出足は鈍いものの、「入国制限が緩和され、今後は伸びていくだろう」と楽観視する。
GW期間中に訪韓して改善をアピールした韓日両首脳について「両国関係の強化につながり、多くの韓国国民も評価している」と歓迎している。
一方で、「円安が進んでいるので、日本の消費者は以前より物価が上がったように感じられ、財布の紐が固くなるだろう。すでに韓国より日本の方が物価安だという感覚がある」と懸念している。それでも今後の利用者の増加を見込んで、文化体験などのツアー企画も計画し、コロナ後の消費拡大に備えている。
■GDP押し上げ効果
今年のGW期間中の経済効果について野村総研の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、国内旅行消費額の前年推定値1兆8050億円を1兆937億円上回る2兆8987億円と試算している。これは年間GDPを0・52%押し上げる。木内氏は「足元の日本経済は輸出の鈍化などから製造業の活動に足踏み感がみられるが、GW期間中の旅行・消費額の増加は日本経済に一定程度の下支え効果を発揮するだろう」としている。
19日から広島で開かれる先進7カ国首脳会議(G7サミット)には再び尹大統領が訪日し、韓日両首脳が韓国人原爆犠牲者慰霊碑を訪れる。首脳レベルで交流が進むなか、経済・文化面での民間レベルへの波及にも期待がかかる。 |