冷戦時代、米国は旧ソ連を牽制するため、貧しい中国を世界の工場に育てた。しかし、今日の中国は米国のお陰で豊かになったにも関わらず、恩恵を裏切って米国の覇権に挑戦している。
中国は米国に次ぐ”G2国家“だと威張っているが信頼性に欠けており、見せ掛けの側面が多い国柄である。米国は食料と石油資源を自給自足出来るが、中国は、食料と資源をほとんど輸入に依存している。
世界のIT・半導体産業は米国が70%のシェアを持っており、残り30%は日本、韓国、台湾が占めている。特に、中国に生産拠点を置いた欧米、日本、韓国が生産工場をインド、ベトナム、東南アジアへ移転している。
中国で伸びる電気自動車も今後は欧米が得意の水素燃料車、合成燃料車という、脱炭素車が世界自動車市場のシェアを急拡大する見通しだ。
米中は核保有国であり相互確証破壊(MAD)戦力を持っているから、敢えて戦争に踏み切れない。即ち、核保有国同士は先制攻撃が出来ない「恐怖の均衡」が戦争発生を抑止している。従って、キッシンジャー博士は”核保有は仮想敵国と不可侵条約を結ぶ効果をもたらす“と指摘した。
相手国を全面攻撃して全土を占領、支配する在来戦は終わりを迎えた。現代戦の特徴は情報戦、サイバー攻撃、情報心理戦、ドローン、無人機やミサイル打撃による非対称戦と局地戦に様相が変わりつつある。だからといって、在来式の通常戦争が全くなくなったとは言えない。
昨年2月24日、ウクライナに侵攻したロシア軍は首都キーウを3日で占領するといわれたが1カ月以上、苦戦を繰り返した末、首都周辺から撤退を余儀なくされた。しかも、中国が目論む台湾侵攻は陸路ではなく海を渡る高いハードルに直面しているため、成功させるのはなおさら難しい。
中東の小国であるイスラエルはイスラム諸国に囲まれているが、相次ぐ戦争で負けたことがない。イスラエルは大国に敢えて喰われない中東のハリネズミと言われるが、台湾はアジアのハリネズミ的存在である。特に、台湾は有事に備えて中国内陸の三峡ダムを破壊できる長距離巡航ミサイルを配備している。三峡ダムが破壊された場合、中国内陸部が水没する大惨事を招き、致命的なダメージを浴びざるを得ない。
従って、軍事大国である中国が小国である台湾に全面攻撃して占領するだろうという意見は、説得力の欠けた時代遅れの見方であろう。
米国はベトナム戦争で10年間、頑張ったがゲリラ戦に巻き込まれ結局、1975年に撤退せざるを得なかった。その後、79年に中国が統一ベトナムに侵攻したが大敗し、撤退した前例がある。旧ソ連はアフガニスタンに侵攻して10年間、アフガン武装集団と戦ったが89年、負けたかのように撤退し、旧ソ連は崩壊した。
歴史を遡ると04年、日露戦争当時、欧米では「日本は東洋の貧しい片田舎国で小さな島国だから軍事大国ロシアに必ず負けるだろう」と言われた。しかし、日本は黄海海戦や旅順攻略で勝利し、バルチック艦隊を迎え撃つ日本海海戦でも大勝利を収めた。
台湾は中国軍の上陸可能な海岸12カ所を要塞化している。万が一、中国が台湾に武力侵攻したら、予想外の落とし穴に陥るはずだ。ちなみに、米国は台湾海峡にAI搭載無人潜水艦を配備する計画だ。これこそ、戦況を左右するゲームチェンジャーになる見通しだ。結局、中国は危険過ぎる台湾侵攻の冒険に踏み切るよりは親中政権の樹立、情報工作や懐柔、脅迫による台湾国内の擾乱など、非軍事的な手段に力を注ぐものとみられる。
台湾海峡とマラッカ海峡は、韓国と日本のエネルギー(原油)輸送路の核心的な海峡であり、海の生命線である。中国は、韓国と日本が台湾問題で「力による現状変更に反対する」共同歩調を取ることに強く警戒している。韓米同盟と日米同盟はインド太平洋の平和と安保を保つ二本柱であることを再認識する。 |