北朝鮮の人権に関する国連調査委員会(COⅠ)設立10周年を記念したフォーラムが4月28日に都内で開かれた。約70人が参加し、人権被害解決のための国際的な連携の必要性を再認識した。
冒頭、国連人権最高代表事務所のソウル人権官、ハ・イムスク氏が「北韓の人権侵害は深刻だ。国家主導の拉致は前例のないもの。そのような状況でCOI発足10周年は意義深い。加害行為を防ぎ、責任追及を促したい。この先何をなすか考えたい」と祝辞を贈った。
基調講演で「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」の山田文明理事は「人権犯罪から救出できた被害者や解決をみた問題はほとんどない。現状を直視し、原因を検証して問題解決を実現しなければならない」と述べた。
北韓帰国事業での帰国者で、のちに脱北したモドゥモイジャの川崎栄子代表は「孫がいたが、脱北するときに連れてくることができなかった。のちに私が日本にいたことが原因で、軍隊内で殺された」と自らの体験を語った。北韓帰国事業から60年を超えたことで、「負の遺産を形あるものとして残すため、新潟に資料館をつくる」と計画を明らかにした。
コリアフューチャーのキム・ジウォン研究員は、収容所で妊娠した女性が同意なしに強制堕胎させられた事例について「消毒していない注射針で薬物を投与され、刑務官が腹部に打撃を加えて胎盤を剥がした」と生々しい実態を報告した。
「横田めぐみさんとの再会を誓う同級生の会」の池田正樹代表は、小中学生時代のめぐみさんの写真をスライドで上映しながら「明るくやさしい人柄だった」と振り返り、「父親の滋さんは亡くなったが、母親の早紀江さんには会わせてあげたい。時間はない」と早期の解決を促した。
北朝鮮帰国事業裁判弁護団の福田健治弁護士は、帰国事業に参加した5人の脱北者が北韓政府を被告とした人権侵害の責任を問う日本で初の訴訟を担当した。昨年3月、東京地裁は北韓の違法性を認めつつも、原告の訴えを退けた。
福田弁護士は「訴訟を起こすことは、加害行為の内容と被害について記録として残し、裁判所の判断によって公的な承認を受けることになる」と意義を強調した。
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