米国で昨年、半導体の生産や研究開発を後押しするために527億ドルの支援を行う「半導体法」が成立。3月21日、ガードレール(投資制限ルール)が発表されたが、韓国の半導体企業に与える影響は。
米商務省は3月21日、半導体法のガードレール条項に対する規則案を発表した。米国の半導体法では同国の補助金を受け取る企業に対して10年間、中国への投資(生産能力の拡大)を禁じているが、今回発表されたガードレール条項では、制限が緩和された。
サムスン電子やSKハイニックスなどの韓国半導体大手企業は中国に大規模メモリ半導体工場を有していることから、どのような規制が敷かれるか注目されていた。
ガードレール条項によると、米政府の半導体補助金を受け取る企業は(1)中国国内の工場の生産能力については、今後10年間で5%以内まで拡張することを認める(2)先端製造プロセスの半導体ではなく旧式プロセスの場合、既存工場の生産能力拡張を10年間で10%まで認める(3)生産量の85%以上が中国の内需市場で消費される場合には、10%以上の設備投資、工場新設も可能(4)中国企業との技術共同研究などは制限されるというもの。ガードレール条項は、60日間の意見取りまとめを経て確定する。
サムスン、SKハイニックスは中国内の製造装置の維持と技術的アップグレードも一部可能になり、制限された範囲内だが、新規投資を通じて先端半導体の製造施設を追加したりアップグレードできることになった。最悪のシナリオは避けられた形だ。
だが、3月27日に米商務省が発表した「半導体生産施設投資補助金申請手続き」で新たな高い障壁が設けられた。
同告知で半導体補助金を申請する企業は申請時に、予想キャッシュフローなど収益性指標を明らかにするとともに、指標の算出方法を検証可能とするエクセルファイルの提出を義務付けた。
商務省が提示したケースでは半導体工場のウエハーの種類別生産能力、稼働率、予想歩留まり、生産初年度販売価格、その後の年度別生産量と販売価格増減などを含み、さらには人件費と公共料金ほか、生産に関連した詳細なデータをすべて公開するよう求めている。
業界関係者は要求する情報水準が過度であり、企業の機密レベルの情報を公開せざるえない、と懸念を示している。
米国と中国の半導体をめぐる輸出規制はこれだけではない。米商務省産業安全保障局(BIS)は昨年10月、輸出管理規則(EAR)に基づき、先端半導体用の製造装置を中国に輸出することを事実上、禁止した。
あわせて、中国現地の生産施設を運営する第三国の企業であるサムスン電子とSKハイニックスには、この措置の適用を1年間、猶予している。許可期間は今年10月までであるため、追加延長が必要だ。
サムスン電子やSKハイニックスの1年間のEAR適用猶予が終わった場合、ガードレール条項に基づき技術のアップグレードが制限される可能性もある。
尹政権発足後、バイデン大統領はすぐに訪韓した。サムスン電子の平沢半導体工場を視察し、「半導体が韓米同盟の中心」として、両国の経済安保同盟の位置づけを明確にした。だが、その後の政策は、対中国半導体規制を通じて米国の半導体産業の復活を優先し、韓国に対して著しく不利益な政策を推し進めている。経済分野では米国優先主義を露骨に掲げ、同盟国に負担を強いているという認識が広がっている。
サムスン電子はテキサス州テイラーで170億ドル規模の先端半導体工場の建設を進めている。さらに2000億ドルの資金を投じて、テキサス州内に複数の半導体製造工場を建設する可能性があることを明らかにした。SKハイニックスは、先端半導体の最終製造工程を行うパッケージング工場を米国内に建設する計画を公表している。
尹大統領は同30日、ソウルを訪問した米国通商代表部のタイ代表と会談。「過剰な情報提供」を巡る企業の懸念を考慮するよう米政府に求めた。 |