尹錫悦大統領は、韓日を「未来のパートナー」として関係を発展させていく、という確固たる意志をもつ。尹大統領は訪日後初めて執務を行った２０日午前、大統領室首席秘書官会議で「韓日関係の改善と協力について国民が実感できるよう、各省庁は後続措置に全力を尽くしてほしい」と指示した。　　　　　　　（ソウル＝李民晧）

　尹大統領は韓国において従来の政治家とは異なる言語感覚の持ち主だ。リップサービスを嫌い、自身が口にした言葉は守ろうと努める。大統領候補当時の公約も着実に実行している。日本との関係改善に向けた意志も同様だ。選挙期間中の尹大統領が発表した日本関連のコメントから、最近に至るまでの迅速な行動を鑑みれば一目瞭然だ。耳障りのいい言葉を並べるだけではなく、真剣に関係を改善しようという意気込みが感じられる。
日本からの帰国後、最初の執務日となった２０日、大統領が真っ先に指示した案件が「韓日関係の改善」だった。

大統領室高官の非公式会見Ｑ＆Ａ

同日午後、大統領室高官は担当記者団に対し、韓日関係に関する政府の立場を明らかにした。実名報道を控えた非公式会見では次のような質疑応答（要点）が行われた。

　記者　日本のメディアでは、独島や慰安婦問題に続き、福島の水産物輸入規制の撤廃も要求したとの報道があったが、これは事実か。
関係者　度々申し上げたが、独島と慰安婦問題が俎上に載ったことはない。水産物問題については、両首脳による具体的な会談内容を公開することはできない。ただ、その後大統領を表敬訪問した日本の議員らが発言していたため、背景だけを説明する。（放射能）汚染水と水産物の問題は切り離すことができず、これに対する政府の立場は一貫している。万が一、国民の安全と健康を脅かすことがあれば、政府は絶対にそれを受け入れることができない。その問題をクリアにするためには安全性が科学的に立証されるべきだ。次に、国民が心理的、現実的に安全であると感じられてこそ、我が国は措置を講じることができる。

記者（日本メディアの報道について）日本側に抗議したか。
関係者　首脳会談の終了後、根拠のない事実や歪曲報道がなされたことに対しては外交当局が遺憾の意を（日本に）表明し、再発防止を求めたと聞いている。

記者　（今日）韓日関係改善について、具体的に大統領はどのような発言をしたのか。
関係者　両国の交流・協力については各省庁、政界、経済・産業界、そして新世代で様々な提案がなされていくだろう。例えば、経済・産業面では半導体や電気、自動車、バッテリーなどといった先端技術の分野で韓日間における協力の余地がある。韓国が半導体を作り、日本がその半導体を家電製品の中で利用しているからだ。政治においては、近日中に多数の与党議員が日本を訪問し、日本からも大規模な議員団が来韓することになる。できれば野党議員もこれに加わり、韓日協力、未来に向けた関係を構築していってほしい。

　記者　日本の議員が水産物の輸入再開を求めてきた際、汚染水の放流に対する懸念は示さなかったのか。
関係者　先ほど政府の基本的な立場を説明した。大統領の立場も政府の基本的スタンスと変わりはない。

記者　カナダが韓国、米国、日本の４カ国の新たな協力枠組み「新クアッド」の創設を提案したという報道があった。韓日首脳会談でも議題に上ったか。
関係者　その件については、５月に行われるＧ７や韓米日首脳会談の際に議論される可能性が極めて高い。現段階において韓米日の３カ国は、軍事安保、経済安保に向けて協力していくという方針で一致している。
首脳間の対話は公開しないのが原則だ。一部メディアが誤った情報によって事実無根、または歪曲報道を行うケースはあるとしても、日本政府が両首脳間の対話内容を公開することはないと聞いている。

１６日に開催された韓日首脳会談。尹錫悦大統領（左）と岸田文雄首相（写真＝大統領室）