北韓の金正恩がミサイル発射や無人機侵犯など対南軍事圧迫を強化するなか、尹錫悦政府は李在明・文在寅の友軍である従北スパイ団に対する捜査を本格化した。
国家情報院(国情院)と警察は昨年11月、反国家団体を結成した容疑で押収捜索を断行したが、スパイ団事件の輪郭が9日、報道された。韓国メディアの報道を総合すると現在、捜査が進んでいるのは三つのスパイ団事件。(1)進歩党済州道党と「4・3民族統一学校」の代表のカン・ウンジュが結成したハンギル会(祖国統一への一筋の道を遂行する会)(2)慶南進歩連合政策委員長などが結成した「自主統一民衆前衛」(3)全北民衆行動代表が結成した組織を捜査していることが分かった。
押収捜査令状の内容によると、国情院と警察が5年以上内偵してきた今回の事件は、組織の主犯たちはアンコールワット観光を装ってカンボジアに行き、平壌の労働党文化交流局(旧225局)の工作員と接触した。暗号通信法など工作教育を受け、指令通り暗躍し、平壌に報告を行った。
スパイ団は平壌から「民労総の4・3統一委員会」掌握など、民労総と市民団体を前面に出して反米、反保守活動、尹錫悦糾弾・排撃、韓米軍事訓練反対、F35Aなど先端武器導入反対、金正恩賞賛活動などを闘争せよとの指令を受けた。
当局は特に防衛産業の要衝である昌原スパイ団の「自主統一民衆前衛」(2016年頃に結成)を全国組織と見て、事件をソウル中央地検に担当させた。
スパイ団は、民労総と市民団体を利用するため、各種団体活動に積極的に参加し、活動してきた。済州島スパイ団の場合、平壌の指令通り労働界幹部と農民運動家など2人を包摂して「ハンギル会」を組織した。「慶南進歩連合」は06年3月、慶南地域150団体が「自主・民主・統一・社会的平等」の実現を掲げて結成した組織で、押収捜索対象者である金ウンホが常任運営委員長を務める「5・18民族統一学校」の15年8月の竣工式には、韓国の従北左翼勢力が総集結した。
スパイ事件の摘発は李明博・朴槿惠政府のときには、年平均4件程度あったが、文在寅の5年間ではわずか3件だった。文在寅は「自主統一忠北同志会」事件捜査を妨げ、昌原スパイ団事件を内偵中の国情院の対空捜査権を完全に剥奪する法案を20年12月に作った。
労働党文化交流局の指令を受けた「一心会事件」(06年10月)、「旺載山スパイ事件」(11年7月)、「自主統一忠北同志会事件」(21年8月摘発)には共通点が見られる。北側は済州島スパイ団のハンギル会のように金正恩の偉大さと忠誠への一心を特に強調している。
尹錫悦政府は軍の正常化のためにも「軍事安保支援司令部」を「国軍防衛司令部」に回復、再建するなど、防諜当局が国家保安法違反に対する捜査を再開したが、国情院の機能が完全回復しない限り、平壌の神政全体主義独裁体制やそれに内応する従北など、内部の敵から大韓民国を守り抜くのは難しいというのが実情だ。 |