在日1世たちの日常を4年間追ったドキュメンタリー映画『花はんめ』(2004年)の金聖雄監督の新作ドキュメンタリー劇場用映画『オレの記念日』が公開中で、話題を呼んでいる。冤罪で20歳のときに逮捕され、29年間も獄中生活を送った桜井昌司さんの人生を描いている。
金監督は「冤罪だけでなく、彼の生き方を描きたかった」と語った。冤罪で20歳から30年以上、人生を狂わされたにも関わらず「逮捕してくれたことで、今の生活がある」と、無実の獄中生活訴訟を感謝し笑い飛ばしてしまう桜井さんは、ガンが見つかっても悲観せずに受け入れている。
桜井さんは、まず勝つことはあり得ないと言われる、冤罪に対して国を相手取った国家賠償裁判に54年をかけて勝訴した。「目標があれば頑張れるということを、何かしらの困難を誰もが抱えている今の時代に伝えたかった」という。
金監督が撮る映画はどれも、社会の理不尽と闘っている人々が悩みや苦しみを乗り越える姿を描いていて、励ましになると在日社会でも話題になってきた。
10月30日には、上映後に社会派シンガーソングライターの中川五郎氏とトークショーを行った。中川氏は、法廷では人として当たり前のことが認められず、常識が失われていることに言及して、それでも声をあげていく重要性を、自身の音楽活動と重ねて語った。
『オレの記念日』は好評を博して東京、神奈川、名古屋など、随時全国拡大上映中。金監督は現在、存命する在日1世と2世の取材を続けている。
 | 丁寧に人々の生き様や思いを映しだす金監督(上)と最新作「オレの記念日」(下) ©Kimoon Film | |