6・25戦争(朝鮮戦争)の休戦協定まで間もなくという1953年7月、3人の学徒兵が江原道華川郡周辺の中部戦線に動員されていた。会社経営者の息子でリーダー格のヒョンテ、両親がすでに他界し叔父に育てられたユング、国語教師の息子で真面目過ぎるドンホ―戦争を背景に、彼らをめぐって様々な男女が関わりあっていく。
3年後から始まる第二部ではヒョンテの中学時代の同級生ソッキが加わり、待ったなしの人生が各々さらに複雑に絡みながら流れていく。タイトルにある「坂」は、原題のハングルでは「崖」のイメージが強いという。木々はしっかりと根を張って生きていけるのか、それとも崩れ落ちるのか。果たして戦争は、若者たちに何を残したのか。
著者は日本でもなじみが深い。短編作品『鶴』はラジオハングル講座のテキストで紹介され、『にわか雨』はアニメーション映画として公開された。それぞれにテーマは異なるが、何か強い力でグイグイと引き寄せられてしまう点では、本書も含め共通している。詩人としてスタートした著者が繰り広げる繊細で骨太な世界を味わっていただきたい。
書肆侃侃房刊
定価=2640円(税込) |

- 2022-09-22 6面

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