人間関係に疲れた人たちにとって、万能の処方箋は存在しない。ならば、せめて一粒のビタミン剤のようにいつでも服用できる「心理カプセル」が与えられたなら―との思いで、精神科医が著したのが本書である。
他人に期待して、応えてもらえずに傷つくといった経験はないだろうか。著者は「加害者はいないのに被害者がいる」というおかしな状況が生まれてしまうのが人間関係だとし、その絡み合った糸を解きほぐし、自分を護る方法を解説してくれる。
自分の思考とは意外に厄介なものだ。特にマイナス方向に振れたときには手に余る場合が多い。本書でも「ネガティブな思考は根が深いため、やすやすとは取っ払えないばかりか、状況がほんの少し悪化しただけでふっと浮上して」くるものだと指摘、そのことを意識したうえで対処する必要を説く。まるで自分のことを言われているかのような事例もある。
興味深いのは「おまじない」の力だ。悪いおまじないであれ、良いおまじないであれ、繰り返していれば人生は自然にその通りの方向へ進んでいくという。今日からでも試してみようという気になる。その時々で自分に必要なヒントが得られる本、それが本書である。
イースト・プレス刊
定価=1650円(税込) |

- 2022-09-22 6面

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