大統領執務室が龍山に移転したことで、青瓦台が一般に開放された。10日、国会で尹錫悦大統領の就任宣言が行われた同時間に、青瓦台は国民の元に返還された。1948年8月の韓国樹立から74年間にわたって大統領執務室と官邸が置かれていた「最高権力者のための殿堂」が、この日を境に国民の空間へと生まれ変わった。
青瓦台の開放について、尹政府の就任前には懐疑的な声もあった。しかし、いざ開放されると超人気観光スポットへと変貌した。12日0時現在における青瓦台の観覧申込み者数は231万人に達した。1日の入場者数が最大3万9000人であることを踏まえると、今から申し込んで当選したとしても、7月にならないと観覧できない状態だ。
青瓦台に入った市民らは「夢のようだ」「とても美しい」と口々に感嘆の声を漏らしていた。正門を入ると、なだらかな上り坂の先に本館の青瓦台と北岳山の緑が広がっている。市民らは写真を撮り、地面に描かれた案内表示と地図を見ながら思い思いに散策を楽しんだ。
正門から見える本館は青瓦台の中心であり、歴代大統領の執務室があった建物だ。大統領の象徴だった本館前には、記念写真を撮ろうとする市民らが長蛇の列を作っていた。大統領を象徴する鳳凰模様の前にも人々が押し寄せていた。
芝が敷き詰められた本館前の大庭園ではプンムルの公演が行われていた。周辺の木陰には見物客が自由に腰を下ろし、飲み物を片手に公演を楽しんでいた。
本館西側に置かれた迎賓館は、外国の大統領や首相など国賓の訪問時に使用される宴会場で、100人以上の大規模会議も行われていた。迎賓館後方の七宮は、朝鮮時代の王を産んだ側室7人の位牌が祀られており、1966年に史跡として指定された建物だ。
本館東側へ約5分程度歩いたところにある大統領官邸にも多くの見物客が訪れた。本館同様に瓦屋根が施された官邸は、大統領家族のプライベートスペースである母屋とイベント用スペースである離れ、そして庭で構成されている。
鍾路区三清洞に住む60代の女性は「目と鼻の先に住んでいるのに中に入ったのは初めて。こんなに立派な建物を新大統領が使わないのはもったいないと思う一方で、『九重宮闕』と揶揄されている理由が分かった」と語った。「九重宮闕」とは、9層に重なった垣の中にある宮殿という意味で、権力者が青瓦台に入ると閉じこもってしまう、と批判されてきた。権力者が甘言にそそのかされて世相に疎くなるという意味だ。
官邸を下ったところにある「緑地園」でも公演が行われていた。緑地園は青瓦台の敷地内で「最も美しい庭園」と言われている。120種類以上の樹木と歴代大統領による記念植樹があり、中央に植えられた盤松は樹齢300年を超える。
官邸と緑地園の間には、1900年代初頭に建てられた伝統家屋「枕流閣」、国内外の要人らが非公式会議を行う「常春斎」がある。青瓦台敷地内の散策にかかる所要時間は1時間半から2時間程度だ。
(ソウル=李民晧)
 | 一般公開された青瓦台正門と見物客 | |