現在、韓国の若者文化を代表するキーワードの一つが「ニュートロ」だ。ニュートロとは、新しさ(New)とレトロ(Retro)を合わせた造語で、レトロを新たに楽しむことをいう(時事常識辞典)。日本でも「昭和レトロ」が形を変えてブームが続いている。両国のレトロトレンドを取材した。
世界的なトレンドに
 | 昔風の居酒屋が並ぶ乙支路チメク街を再現(駐日韓国文化院展示) | 韓国のニュートロは2018年頃から徐々に広がったようだ。ソウル大学消費トレンド分析センターでは19年の「トレンドキーワード」に「ニュートロ」を予測した。今ではさまざまな分野で広がりを見せている。
18日から5月7日まで駐日韓国文化院で、韓国ニュートロ展が開かれている。レトロ文化流行の直接的な理由は「映画・ドラマ・バラエティ番組などが背景にある」と解説。フォークのライブカフェを素材とした映画や、80年代のソウルを舞台にしたドラマなどが次々と人気になり、カセットテープやLPレコードなどが再流行、食品分野にもニュートロが広がっているというものだ。昔風の商号で看板を掲げる食堂やレトロな内装を施したカフェも登場、思い出のアニメやドラマ、ゲームも人気になっているという。
流行の背景にどのような心理が働いているのか、様々な分析がなされている。一つには、若い消費者にとってニュートロは過去に人気があったものという安定感・安心感と、経験したことのない新しいイメージの商品を楽しめるという、二つの側面を持っているというものだ。この心理が未来に対する不安と負担を軽減させる効果があるとする。
また、常に新しいものを求める若い世代が、デジタルの洗練されて完全なものとは異なる、素朴で不完全なアナログに魅力を感じているとの見方もある。
■日本のレトロブーム
レトロなものに若者が新鮮さを見出し、「おしゃれでカワイイ」と人気になった流れは日本でも変わらない。日本の若い世代にいわゆる「昭和レトロ」が流行し始めたのは10年頃で、「平成レトロ」を経て、今でもブームは継続中だ。日本の20代へのアンケートでは、7割近くが「レトロは魅力的」と回答。もちろん内容は変化している。今は「輸入レトロ」が人気だ。
例えば、Y2K(「Year2000」の短縮形)という、2000年前後に欧米を中心に流行ったファッションが人気だ。これは世界的な傾向でもある。
加えて、韓国のニュートロが大きく影響している。今や日本の若者とKカルチャーは切り離して考えられない。韓国ドラマの主人公が身につけていたことからビーズアクセサリーに注目が集まったり、好きなK―POPアイドルが取り入れたレトロアイテムが話題になったりしている。70~80年代に流行したJ―POPを韓国のDJがリメイク、再評価され逆輸入されるケースもある。
コロナ禍で海外に行けない事情も手伝ってか、SNS上で世界の国々のレトロな文化が少しずつ形を変えながら再評価されている。今後もしばらくは韓日におけるレトロトレンドは変わりないようだ。 |