9日に大統領選挙が行われた韓国では、6月1日に第8回全国同時地方選挙が予定されている。全世代のうち浮動層が最も多いとされる20代の動向に関心が集まっているが、彼らの政治に対する意識はどうなのか。日本では、どの時代にも若者の投票率は低いと判で押したように言われる。韓日の20代が政治をどのようにとらえているのかを、世界の国々との比較も交えデータから考察してみた。
青年政治家育成を目的とする韓国の非営利団体は昨年12月、全国の19~29歳の1008人を対象に政治に関するアンケートを実施した。まず、政治にどれだけ関心があるかとの質問に「関心がない」と答えたのは55・2%だった。そのうち、「全くない」は23・3%で、「非常に関心がある」と回答した5・3%の4倍にあたる。政治に関心がない理由の上位回答は、(1)政治が複雑で難しい(26%)(2)政治で社会が良くなるという期待が持てない(25・8%)(3)支持する政党や政治家がいない(23・4%)というものだった。
この数字をもとに、20代にとって政治は「コスパ(費用対効果)」が悪いものなのだろうと、当該団体では結論づけた。政治事案を理解するのに多くの時間が必要で、容易に変化を引き出せるものでもない。理念に賛同できる政党やフォローすべき政治家がいないと、若者が捉えているとの見方だ。「政治活動に参加しているか」という質問にも58・8%が「参加していない」と答えている。
だからといって20代を「政治に関心のない世代」と断定することはできない。同アンケートにも77・9%が大統領選挙に投票すると答えている。関心を持てない理由に「政治がより良い世の中を作るための過程というよりは、大人の力比べのように感じられる」との指摘が少なからずあった。既成政治には関心が持てないという意味でもある。「政治で最も関心を持つ内容」の質問には、回答者の41・9%が「気候、コロナ、ジェンダー、就職など特定テーマと関連した政策」と答えている。
専門家は20代の主な特徴として「実利性」を挙げている。どの世代よりも現実的に事象を判断するという分析だ。名分や理念よりも、自分と周囲の人、日々の暮らしについて関心が高い。個人としての繋がりを広げるSNSもその一助となっている。仁川大学政治外交学科の教授は「20代は政治に無関心に見えても雇用、不動産、環境など関心のあるテーマに対してはアンテナを立てている」と解説している。
●政治と宗教の話はタブー
では、一つの政党が長期にわたり政権を担っている日本の状況はどうだろうか。選挙のたびにメディアでは「若者の政治離れ」を話題にするが、少なくとも昭和30年代生まれが選挙権を得たのち、政治に関心がある若者は、どの時代もごく少数だった。さらに「政治と宗教の話はタブー」という日本独特の文化がある。争いを避けるためだろうが、若者に限らず日本社会においては、そもそも大多数が政治から距離を置いている状況だ。
内閣府は2018年11月から12月にかけて日本、韓国、米国、英国、ドイツ、フランス、スウェーデンの7カ国の13歳から29歳までの男女を対象に、1000サンプル回収を原則としたWEB調査を実施した。自国の政治に対する関心度では、「非常に関心がある」と「どちらかといえば関心がある」を併せると、7カ国中最も高かったのが独の70・6%、次いで米国64・9%、韓国はこの調査では53・3%となっている。唯一、半数に満たないのが日本の43・5%だ。「社会問題の解決に関与したい」かどうかの問いには、韓国は独・米に次ぐ68・4%が「そう思う」と答えている。「将来積極的に政策決定に参加したい」割合も60%と、米・英に次いで高い。日本はどちらも半数に満たず、最下位となった。
文化交流が進んだ韓日で、次世代には政治や社会問題についての情報や意見交換を期待したい。政治に消極的な社会で育った日本の若者にも、変化が訪れるかもしれないからだ。 |