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最終更新日: 2022-06-22 05:50:32
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2022年03月01日 11:26
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ソウルを東京に擬える 第9回「工場街としての永登浦と蒲田」

 ソウル駅から列車に乗ると、漢江を渡って最初に停車する駅が永登浦駅だ。駅ビルやその周辺には百貨店、すぐそばにはタイムスクエアという商業施設があるが、繁華街にはギラギラとしたネオンが輝き、どことなくオールド感漂う歓楽街にも思える。近くには永登浦伝統市場という天幕のかかった市場もあり、庶民的な印象だ。
そんな永登浦駅周辺は、大田区の蒲田駅付近と雰囲気がよく似ている。こちらも駅ビルで、西口には大きなアーケード商店街、東急線高架下にはバーボンロードという昭和レトロな小洒落た路地があるが、東口から京急蒲田駅までのあいだには居酒屋やスナックが多く、駅周辺は焼肉、中華などの飲食店が密集、雑居ビルには風俗店もありカオスな街だ。
双方は周辺に町工場街があることが大きな共通点だが、その歴史も紐解いてみたい。永登浦駅は1899年の京仁線開通とともに開業、翌年の漢江鉄橋の完成により北岸とつながった。それまで農村だったこの街だが、1912年に朝鮮皮革が工場の操業をはじめると、30年代には鐘紡や東洋紡などの日本資本の紡績工場、駅の南側には朝鮮麦酒(現ハイトビール)、昭和麒麟麦酒といったビール工場ができ、大工場街へと変貌。解放後から97年のIMFショック頃まではそうした場所だった。今も駅北側の通りを西へ歩くと鉄パイプが積まれた町工場が並んでおり、そこは鉄工場街として知られる文来洞という街だ。そして永登浦区から分離した九老区、衿川区には九老公団と呼ばれた衣類を中心とする製造業の工場街が20世紀末まであり、これらが「漢江の奇跡」という60年代後半からの経済成長を支えた。ソウル・永登浦周辺の工場街は仁川、そして京畿道各地へ広がった京仁工業地帯の核となる存在なのである。
蒲田駅は東海道本線の駅として2004年に開業(京急蒲田駅は01年)。大正から昭和にかけてはタイプライター製造の黒澤商店、陶磁器メーカーの大倉陶園、東洋オーチス・エレベーターなどの工場が駅周辺で操業していたが、そのいくつかは社名や業態を変え、現在にまで続く。
今の蒲田駅あたりは永登浦駅と同じように商業街だが、広く見ると大田区全体では機械・金属加工の業種を中心とする町工場が目立ち、ものづくりの街として知られる。蒲田から3駅離れた多摩川沿いの下丸子には、戦前から三菱重工や三井精機など大手の工場があり、多くは前世紀までに移転したが、今でもキヤノンの本社がここにある。こうした大企業の下請けとして高い技術力をもつ零細の工場はこの地で操業を続けており、住宅や工場が混在する町の光景は衿川区の町工場街ともよく似た雰囲気だ。これらが1950年代後半からの日本の高度経済成長を支え、川崎・横浜、南関東へと広がった京浜工業地帯の一角を担っている。
話をソウルに戻すが、地下鉄の路線図を眺めると横文字の駅名が目にとまる。それは九老・加山デジタル団地である。これらは九老公団の跡地に形成されたビル街で、ここにベンチャー企業が入居し、韓国のIT発展を支える。東京ではそれが渋谷や五反田にあたるが、街並みはソウルほど際立ってはいない。そして文来洞の鉄工場街は2000年代中盤から壁画がちりばめられて「芸術創作村」と呼ばれ、米国映画『アベンジャーズ2』のロケ地にもなり、昨今は工場がカフェやアトリエにリノベーションされ、話題を呼んでいる。
東京では大森町~梅屋敷駅間の京急線高架下に「梅森プラットホーム」というものづくり複合施設が19年に誕生し、町工場とクリエイターのコラボレーションを促す動きもある。今後は優れた技術をもつ町工場が、新しい形で世界へ発信していくことに期待したい。

吉村剛史(よしむら・たけし)
1986年生まれ。ライター、メディア制作業。20代のときにソウル滞在経験があり、韓国100都市を踏破。2021年に『ソウル25区=東京23区』(パブリブ)を出版。

2022-03-02 6面
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