本書は6人の女性作家による「おばあちゃん」をテーマにした短編集だ。韓国文学に慣れ親しんでいる人なら作家名から想像が可能と思うが、タイトルと装丁から受けるイメージ通りの物語は一つもない。冒頭話では、「おばあちゃん」になりたかった女性が主人公だ。また、残された日記から孫が想像するおばあちゃんの最後の恋や、周囲にかすかな憎しみを生み出していた厳格な祖母など、様々な視点から語られる6人の「おばあちゃん」の人生は、強烈なインパクトを残す。
最終話は、高齢者人口が絶対多数を占める近未来社会が舞台だ。主人公のミナは施設で暮らしている。世話をするのはAIロボットだ。思った以上に長く生きてしまったという彼女の夢は死を迎えることだが、それでもささやかな楽しみはあった。そして社会は、ミナのわずかな希望を押し流して進んでいく。
繰り返すようだが、これは未来の話だ。だとすると、ミナは2021年現在、何歳なのだろうか。老いていく自分と変化し続ける社会―他人の人生を読んできたはずが、すべて自分事だった。「年老いた女になるつもりはなかった」―ミナの言葉が追いかけてくる。やはり、一筋縄ではいかない短編集である。
書肆侃侃房刊
定価=1760円(税込) |

- 2021-10-20 6面

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