韓国と日本という「くに」ができる前から、韓半島と日本列島に住む人たちは交流していた。玄界灘を渡る勇気と運さえあれば、自由に往来もできた。要は、昔はおおらかだった▼だが近代法治国家としての韓日両国の関係は、1965年に結ばれた基本条約と、「完全かつ最終的に解決する」とした請求権・経済協力協定を根幹としている。国民はそれによって保護され、縛られる▼ソウル中央地方裁判所は、元慰安婦が日本政府に対して起こした損害賠償請求訴訟について、原告勝訴の判決を下した。65年の協定を無視しただけではない。「国家およびその財産は、一般に他国の裁判権には服さない」という国際法の原則も無視したことになる▼65年の協定を反故にすることは、その協定に基づく特別永住権、ひいては特別永住の在日韓国人の法的地位が揺らぐことを意味する。一般永住権への一本化を求める声も根強い。民団新年会で、呂健二団長らから韓国政府に対して批判的な発言が相次いだのも、その危機感のためだろう▼韓日は戦後、さまざまな困難を乗り越えながら関係を積み上げてきた。両国の発展は、清濁併せ呑んで決断してきた歴代の為政者と、国民の努力の結実である▼文在寅大統領は、折に触れて「未来志向」というが、1世紀も前の不幸な過去しか見ていない。友好をはぐくんできた人々に思いをはせられぬものだろうか。文大統領は、新年の記者会見で判決について「困惑した」と述べ、具体的な解決策については言及しなかった。 |