2020年は、武漢コロナウイルスが世界中で甚大な人的・経済的被害をもたらした年だった。現在も国内ではコロナ第3波が懸念され、あらゆる活動に支障を来している。在日社会にも大きな損害を与えており、特に留学生など、両国にまたがる人々に直接的な影響を及ぼしているようだ。
コロナ禍においては人の往来が著しく制限されたため、飲食業や観光業、遊技業などを基幹産業とする在日韓国人社会も大きなダメージを受けた。特に飲食業の被害は大きく、今年1~11月の「飲食業」倒産は792件に達し(東京商工リサーチより)、2020年は飲食業倒産が年間最多となることが確定した。
都心と地方で民団にも差
都心部では外出する人も増え、いや応なく経済活動が再開しつつある雰囲気だが、民団などは「光復節記念式典」などを始め、オンラインで乗り切っている。
民団神奈川はコロナに配慮した非対面企画として、対象の子どもたちに韓国の伝統工芸物品キットを郵送。できあがった作品を回収して会場に展示し、来場者に票を投じてもらう「オリニ工作工芸コンテスト」などを実施した。
一方、未だ不要不急の外出などを自粛している地方は、活動自体を控えているところが多いようだ。
民団北海道は「出歩かない日が続いており、かなり我慢している状態だ。忘年会・新年会も中止が決定した」と状況を語った。
民団宮城も同じく、「学生たちも精神的につらいだろう。これからもっと大変になると思う」と述べた。
観光業などが経済の要である地域も苦しい状況だ。民団沖縄は、「韓日問題で昨年から(韓国人旅行客の)数は減っていたが、コロナ禍でさらに追い打ちをかけられた状態。在日以外も同様だが、観光業を営むところは軒並み厳しい。立て直せる見通しは立たないので、今は状況を見て耐えるしかない」と心境を吐露した。
留学生にも影響大
韓国からの留学生も様々な問題に直面している。
「もっとも大変だったのは、今年10月まで続いた入国制限」だと語るのは、在日韓国留学生連合会で第38代会長を務めた金載榮氏。
金氏によれば、緊急事態宣言の発令で帰国する留学生が多かったものの、一時帰国のつもりで退居せずに家賃だけ払い続ける学生が少なくなかったという。
「ビザがあっても再入国できなかったため、自分も含めかなり困っていた」と明かした。
また日本に残った場合も、家族が近くに居ないため、人間関係が希薄で孤立しやすいのだという。
同連合会・第39代事務局長の金建学氏は、「大学1年生の留学生が授業に追いつくことが難しくなったと思う」と語った。
例えばレポートを書くにしても、先輩や教授らによる構成の指導や文章の添削が必要だ。授業のオンライン化によってこうした機会が失われれば、勉強の質と理解度に差が出てくる。
オンライン授業の弊害は他にもある。金氏は、「日本に留学する最たる理由は日本での就職。だが、オンラインへの切り替えによって韓国で授業が受けられるようになると、いざ4年から日本で就職活動をする時に下地が何もない。日本社会へのアクセスが難しくなる」と指摘した。
今年下半期には米国のファイザーやモデルナなど、いくつかの製薬会社がコロナワクチンの開発に成功している。英国政府が2日、世界で初めてファイザー社製コロナワクチンの広範な使用を承認したが、現状の改善が実感できるまでどれだけかかるかは不明だ。
先行きにわずかな光明は見え始めたものの、年明けからも苦境は続きそうだ。 |