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2020年11月18日 00:00
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【BOOK】『ぼくは幽霊作家です』(キム・ヨンス・著/橋本智保・訳)
時代と空間をめまぐるしく変遷しながら自らを語ることばのない声に耳を傾ける

 本書には9編の物語が収められている。『簡単には終わらないであろう、冗談』『あれは鳥だったのかな、ネズミ』など、およそタイトルらしからぬ言葉が並ぶ目次に首をかしげていると、解説「ことばでは言えない生のために」とあり、ますます混乱すると同時に興味が湧いてくる。
作品に描かれるのは、現代のソウルに生きる男女、元中国人民志願軍兵士、1888年に韓半島へ渡ったアメリカ人探偵、妓生、国家に対する裏切り者として銃殺される女性など、シチュエーションは多様だが、そこには語り手としての、または聞き手としての「私」が存在する。まるで合わせ鏡の中に広がる次元の階層のように、様々な時代や場所が映し出されていく。歴史上、実在の人物もモチーフとして登場する。いつの間にか読み手も傍観者で居続けることは許されなくなり、合わせ鏡の中へ足を踏み入れる。すると、自分の後ろに「私」の存在を感じてゾクッとする場面に出くわすだろう。
この本は、いつもよりスピードを落として読むことをお勧めする。ときに音読もいいかもしれない。なにしろ「言葉では言い表せないこと」を言葉で綴っているのだ。じっくりかみしめていくと、それが何なのか朧気に見えてくる気がする。
新泉社刊
2200円(税別)

2020-11-18 6面
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