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最終更新日: 2020-04-08 00:00:00
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2020年02月27日 00:00
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【映画】『人間の時間』(韓国)
極限状態でのぞく人間の深淵

体当たりの演技を見せるアダム役のチャン・グンソク(左)とイブ役の藤井美菜©2018 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.

 これは判断の分かれる難しい作品だ。というのも、退役した軍艦を使ってのクルーズ旅行中に、異次元に迷い込んだ船の乗客たちが生き残りをかけて次々と悲惨な事件を起こしていく姿を描く、キム・ギドク監督としても最も過激な作品だからである。
もともとキム監督は暴力的な表現をいとわず、物議をかもしてきた。今作でも現在地不明、外部との連絡方法なしという出口の見えない空間に閉じ込められた人間が、その極限状態の中で道徳と倫理を越えた欲望をむき出しにする。監督が狙うのは乗客たちに人間の心の深淵をのぞき込ませ、個々の人間が持つ善悪の境界線を激しく揺さぶることではないか。
酒、セックス、殺人…ストレートに見せつける手法に気分が悪くなるかもしれない。表現の自由を逸脱していると批判する声もあるだろう。これらの行為だけを見るとグロテスクで正視できないかもしれないが、世界各地の紛争地域で倫理的に許されない行為が実際に行われているのだ。映画が特殊ではないと気づかされる。
戦争は、倫理と道徳が無視される非日常の空間。そこに重ね合わせて作品を見れば、その行為が戦地であろうとなかろうと許されないのだと分かるはず。監督が舞台を軍艦にしたのは、どんな場所であろうと、そこへ足を踏み入れれば戦場と同じだと警告したかったのかもしれない。あるいは人間という不完全な生き物を前にして、倫理と道徳はもろいものだと言いたかったのだろうか。
印象的なのは食糧の確保をめぐるバトルを横目に、謎の老人(アン・ソンギ)が船内から拾い集めた砂の中の種を育てて、食糧不足に備える遠大な生き方を提示していること。もちろんそれだけでは食料は足りないので別の「解決策」が用意されている。ここには獣を集団で倒し、木の実を食べ、種をまくという、人類が食糧危機に陥るたびに見つけてきた再生の物語が暗喩されているように見える。
自身に起こされたセクハラ訴訟を地でいくような本作のストーリー。監督の実人生を彷彿とさせるようなブラックな作品に、今回も賛否両論が渦巻くことは間違いない。
韓日の映画やドラマで活躍する藤井美菜のほか、チャン・グンソク、オダギリジョー、イ・ソンジェ、リュ・スンボムら豪華キャストによる競演も話題に。

(紀平重成 アジア映画ウオッチャー)

公開=3月20日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開。
公式HP=https://ningennojikan.com/

2020-02-27 6面
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