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2019年11月20日 00:00
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【BOOK】「朝鮮から飛んできたたんぽぽ」桜井美智子著
無口で不器用な養父への感謝と思慕 懐かしい炭鉱町の風景と望郷の思い

遠くにうすく立ち上る煙、黙々と畑を耕す父と母、胸にいれずみをした大男、虻(あぶ)がぶんぶん飛んでいる土手…生き生きとした情景が目の前を通り過ぎていく。そして全体を覆っているのは、作者が養父と住んでいた炭鉱の町に満ちていたエネルギーだ。
まったくの他人である自分に愛情を注いでくれた朝鮮人の父・金永希への感謝と、母国に帰ることができずに亡くなった永希の存在を誰かに知らせたい―本書に寄せる思いを作者はそう語っている。
金永希は、その炭鉱にいるただ一人の朝鮮人炭鉱夫で、他の人より頭一つ大きく無口でめったに笑わない男だ。村人たちははじめ、誰も慣れ親しめなかった。しかし、結婚もして仕事を休まずに真面目に働く姿を見て、徐々に人々の信頼を得ていった。そして、「みっち」こと3歳頃の作者と出会うことになる。大きい永希のあぐらの中へすっぽり入って寝入る幼子の姿は、1枚の絵画のようだ。
淡々とした文章に、永希の子に対する愛情と、自身の親を思う悲しみや寂しさがにじみ出る。永希が酔うと必ず口ずさんだという『籠の鳥』の一節が長く余韻を引く。
書肆アルス刊
1100円(税別)

2019-11-20 6面
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