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2019年09月26日 00:00
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【映画】「毒戦 BELIEVER」(韓国)
くせ者ぞろいの情感あふれるノワール

ウォノ刑事(左)はラクと組む作戦に出る©2018CINEGURU KIDARIENT & YONG FILM. All Rights Reserved.
 登場人物のキャラクターがこれほど際立ち、情感あふれるノワール作品はそう滅多にお目にかかれるものではない。イ・ヘヨン監督がキャスティングした俳優陣はそろいもそろって演技派、かつ「くせ者」ぞろい。2時間余り画面に目が釘付けになったのも、入魂の演技で競いあった役者の頑張りにある。
巨大麻薬組織のドンでありながら、誰ひとり本名も経歴も顔さえも知らない。通称「イ先生」と恐れられているのは、どんな男なのか―麻薬取締局のウォノ刑事は、組織解体のためにはベールに包まれた男の逮捕が欠かせないとして長年行方を追っている。ある日、麻薬製造工場が何者かに爆破され、事故現場からたった一人の生存者、ラクが発見される。ウォノ刑事は組織に見捨てられたと話す青年ラクと手を組み、大胆かつ危険極まりない組織への潜入捜査を試みる。ところがラクの案内する組織は、とっくに人格などぶっ飛んだ者たちの巣窟だった。
最高級の麻薬を愛好するハリムを演じたのは2017年に交通事故死したキム・ジュヒョク。彼の遺作となった本映画では、感情の起伏を爆発スレスレで踏みとどまるという怪演で監督を喜ばせた。他の脇役も立場が逆転するたびに表情が別人のように入れ替わっていくので、腰を据えて見ないと頭が飛んでしまう。
そして主役のウォノ刑事を演じたチョ・ジヌンと、青年ラクに扮したリュ・ジュンヨルの演技がまた魅せるのだ。事件の進行とともに目に力強さを蓄えていくチョ・ジヌンに対し、リュ・ジュンヨルは無表情を最後まで貫き通す対照的な演技。二人の立場の違いを熱血とクールという演技でそれぞれ見事に演じ分けた。
チョ・ジヌンは『チャンス商会~初恋を探して~』(15年)で認知症の父親を心配する優しい息子を演じたが、本作では部下を気遣いつつも麻薬組織壊滅に異常な執念を見せるチーム長の役。その彼が10キロの減量で精悍さを増しただけでなく、部下思いの情感がごく自然ににじみでるような慎ましやかさも身に着けた。今作の演技にかけた彼の思いが伝わってくる。
12年に香港のジョニー・トー監督が製作した『ドラッグ・ウォー 毒戦』を、『お嬢さん』の脚本家チョン・ソギョンが大胆に脚色したリメイク作品。それぞれ持ち味があり、別の作品として見たほうがよさそうだ。
ラストの張り詰めた空気と神々しいほどの美しさに息を飲むしかなかった。

(紀平重成 アジア映画ウオッチャー)

公開=10月4日(金)より・シネマート新宿ほか全国順次公開。
公式HP=https://gaga.ne.jp/dokusen/

2019-09-26 6面
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