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2017年10月03日 22:49
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高麗青磁への情熱―112―

京都行(四)

柳根瀅
高徹・訳/馬瑞枝・画

 どれくらい眠ったろうか。人の気配に目を覚ました。夜が明けていたのだ。私は急いで起き上がり、主婦らしい女性に従って浴室に行き、朝風呂に入った。部屋に戻ってタバコを喫っていると、鈴木が現れた。
「疲れたでしょう。よく眠れましたか」
「ええ、ぐっすり眠れました」
「さあ、食事にしましょう」
私は彼の後について行った。居間らしきところに食卓が準備されていた。そこに座っていた女たちは私を見ると頭を下げ、うやうやしく立ち上がった。
 「これが私の妻です」
二七、八歳ほどに見える女性が、
「いらっしゃいまし」
と挨拶した。
私も腰を折り曲げて朝鮮語で挨拶した。
「アンニョンハシムニカ」
鈴木は、隣にいた、すらりとした可愛い女性を指して言った。
「妹の千恵子です」
千恵子は私を見つめて、
「もっと早く挨拶申し上げなければならなかったんですが、遅くなって申し訳ありません」
「いえ、どういたしまして」
「ささ、挨拶はあとでゆっくりすることにして、こちらに座りなさい」
千恵子の横に座った。それはまるで、二組の夫婦が仲睦まじく食事するかのような雰囲気だった。
その日はまる一日、風呂と睡眠、そして走馬灯のようによぎる過去の回想とで過ごした。
翌朝、上原が「町をご案内しましょう」と言う。先ず汽車に乗って大阪に向かった。遺跡や名勝地をひと回りしてから高野山に登った。この山は高くて風景がよかった。あちこちと見て回ったのち、小川の流れているこぢんまりした寺刹に行き着いた。小川の底には小石が敷かれて、玉のような水がさらさらと音をたてながら流れていた。
大人も子どももその水を手で掬って、何体もの仏像に振りかけていた。彼らのしぐさを無心に眺めていた私は、上原に尋ねた。
「どうして仏像に水をかけるんです?」
彼の答えは傑作だった。
「仏さんをきれいに洗ってあげると、極楽に行けるんですよ」
「それほんとうですか?」
彼は困った表情をした。
また別のところへ行くと大きな墳墓があり、そこには安某と書かれた標木が立てかけてあった。近くの人たちに、いつの時代のものかと訊いたが、知る人はいなかった。ただ、年に何度か墓参りにやってくる者がいるということであった。

2017-10-04 6面
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