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最終更新日: 2017-11-15 00:00:00
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2017年08月15日 00:00
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脱北帰国者が語る 北の喜怒哀楽―旧ソ連に密入国(12)
事故死が多発する危険・過酷な労働環境

 ソ連の地で慣れない原木伐採事業に従事していた北朝鮮人労働者は、よく大きな事故を起こしたという。特に、トレーラーを運転中の事故は相次いでいたという。荷台車に長さ8~9メートルの丸太を山のように積み、目的地までの24~30時間、休憩もとらず猛スピードで疾走させるためだ。
運転手には運搬ノルマが定められていた。ノルマを達成できなければ給料から引かれる。なので必死になってトラックを飛ばし、凍結したカーブで曲がりきれず車体が横転、運転手が即死するといったことも珍しくなかったらしい。
切り倒した木の下敷きになる事故、労働者同士のケンカによるスコップや斧での殴りあいなどで、命を落とす人もいたそうだ。労働者の最終目的は一銭でも多く稼いで帰国し、家族とお腹を空かせない程度の生活を営むことだった。だから危険な労働環境の中でも、命懸けで指示されたとおりに働くしかなかった。
ソ連側は自転車、クレーン、チェーンソー、ガソリンなどを支給し、北朝鮮側は安価な労働力を提供していた。切り倒された原木は、ソ連6割、北側は4割の収益で分ける契約だった。北朝鮮側はソ連に搾取され、労働者は自国の幹部から搾取されていた。それを承知でも、労働者は異議を唱えることができなかった。「不平不満、意見があるなら帰れ」の一言を、何よりも恐れていた。
祖国の労働賃金より、搾取されてもシベリアでの労働の方がはるかに好待遇だった。労働者たちは「俺たちは短命の働き蜂と一緒だ」と不平を漏らしつつ、黙々と働いた。事故死した労働者をどのように処理、埋葬するのか、金英範に尋ねてみた。遺体はガソリンが入っていた大きなドラム缶の中に入れられ、焼却される。ガソリンをかけながら、一晩がかりの作業らしい。
悪臭は言葉で表現できないほどで、その作業に動員された同僚たちは、ウオッカをあおりながら、ニンニクをかじって作業をするのだという。ウオッカもニンニクも微々たる効果にしかならず、防寒服に臭いが染み込んでしまうので、そのまま部屋に入ることができず、作業の最後には着ていた防寒服も燃やしてしまうのだ。想像を絶する世界である。
シベリアは永久凍土地帯で、地表から60センチほどは凍っている。死体を埋めて、数年経っても腐敗しない。腐敗しないと骨を拾って遺族に渡すことができないので、焼くしかなかったのである。
翌朝、ドラム缶をひっくり返して遺骨を取り出す。骨は木箱に入れられ、保管室に安置される。遺骨に肉が少し残っていると、料理用のフォークできれいに削ぎ落とすそうである。私は頭の中に「参鶏湯」を食べる光景が浮かんだ。本当に悲惨な話である。
私たちはバイカル湖のほとりを離れてイルクーツクに戻った。車を返し、3人でまたシベリア鉄道横断列車に乗った。目的地はサハリンであった。
途中でチタという駅に降りた。英範兄弟が個人的な用を済ますためであった。英範には異母弟のアレクセイがいるが、そのアレクセイの母の妹、英範から見れば継母の叔母の家を訪問することになった。
チタ駅の駅前広場には、高さ6メートルほどのレーニンの銅像が見えた。ハバロフスクにもレーニン広場があり、そこにも銅像があった。北朝鮮はソ連の真似をして、たくさんの銅像を建てたのだろう。スターリン時代からの個人偶像の名残であった。しかし北朝鮮のように、胸に首領様のバッジをつけた人は見たことがなかった。
私がソ連にいた82年末、ユーリ・アンドロポフが共産党書記長をしていた。アンドロポフは徹底的な社会主義守護者であり、反米感情の強い人物だったと聞いている。当時、北朝鮮の核開発に積極的に技術援助をした張本人であった。ソ連の核開発専門技術者約70人を約1年間北朝鮮に送り、そこで北の科学者に技術を提供・伝授していた。韓国に駐屯していた米軍を牽制する目的があったという。
(つづく)

2017-08-15 15面
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