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最終更新日: 2017-11-22 00:00:00
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2017年07月12日 22:23
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脱北帰国者が語る 北の喜怒哀楽―旧ソ連に密入国(9)
豊かな社会主義国に驚き

 アレクセイとの待ち合わせ場所は、駅近くだった。初対面の時は、事前に写真では見ていたものの、肌が白く肩幅の広いガッチリした体格の好男子という印象であった。背は私より頭一つ大きかった。
まず、彼の年齢をロシア語で聞いた。私の見たところ、彼は20代後半から30代前半に見えた。彼はただにっこり笑って首を横に振るだけだった。私はその瞬間、外国人は初対面で年齢を聞かれるのを嫌がるということを思い出した。
アレクセイは「お客さん、私、朝鮮語は少し知っていますから、朝鮮語で話しても聞き取れますよ」と言ってくれた。本当にうれしかった。彼に親近感を覚え、会話はなおさら弾んだ。
彼はレストランに入って食事をしながら、私にいくつかの注意点を教えてくれた。まず、当分は韓国からサハリンに親戚を訪ねてきたことにすること、次に外で黒い帽子、黒いコート、黒いネクタイの体格のいい男がいたら、絶対に目を合わせないこと。KGBの要員の可能性があり、彼らは特に怪しい外国人がいたら尾行し、質問してくるのだという。第三に、どこに行っても公共の秩序を守り、ルール違反をするなと言われた。ミーリッツア(民警)に捕まったら大変なことになるからだ。最後に、建物や人物をジロジロ見てはならないということだった。ロシア人と話すことがあったら、必ずどのような内容の話をしたのか、アレクセイに報告するよう念を押された。
アレクセイは身振り手振りを交えながら、朝鮮語で説明してくれた。アレクセイは朝鮮語を父から習った。母と妹はロシア人だったが、父や兄、姉と話す時はだいたい朝鮮語だったという。
父はとても厳しく、家庭でも「スパルタ教育」であったらしい。母は中学校の数学教師をしていて、とても優しく、料理が上手で、子どもの性格と将来の目標に合わせて教育をしてくれたようだ。まさに「厳父慈母」であった。
私たちは市内のレストランで食事をした。アレクセイのなじみの食堂で、彼は食堂のスタッフとも面識があったので、私も安心できた。彼が注文したのは白いフレーブ(パン)とボルシチというスープ、そしてウオッカ1瓶とクラースナヤ・イクラ(赤い魚卵=イクラ)、豚の脂を塩漬けにしたものを野菜サラダに混ぜたザクースカという料理だった。シベリアに住むロシア人は、ザクースカをつまみにして酒を飲むのだという。
アレクセイは私に気を使って、比較的弱いウオッカを注文してくれた。まずは乾杯してザクースカをつまんだ。独特の香ばしい味がした。ボルシチには豆類や、トマト、キノコ、ジャガイモや肉が入っていた印象が残っている。
食事が済んでたばこを吸っているときに、どの食卓にも中央に黒いフレーブ(小麦やライ麦から作るパン)が置かれていることに気づいた。
不思議に思った私が聞くと、ソ連の食堂では黒いフレーブが常備されているとのことだった。驚いたことに、フレーブは無料だった。
同じ社会主義国なのに、主食である黒フレーブが無料で食べられるとは、食糧不足で苦しんでいる北朝鮮とはまるで別世界だと思った。アレクセイによると、ウクライナの小麦生産量は世界で1、2位水準だから、食糧不足を気にする人は一人もいないとのことだった。「黒フレーブなどは『いつでもどうぞ』ですよ」と笑っていた。一切れ口に運んでみると、多少酸味はあったが、まずくはなかった。
アレクセイは笑いながら続けた。
「しかし困ったことに、北朝鮮の労働者たちは一番安い食事をして、食べ終わって出ていく時、黒フレーブを全部持っていってしまうらしいですよ。そんな下品なことをする人はほかに一人もいないですよ。大勢で入って来て、食堂内の黒フレーブを全部持っていってしまうこともあったそうです」
私は同じ民族として、とても恥ずかしい気持ちになった。(つづく)

2017-07-12 5面
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