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最終更新日: 2017-11-22 00:00:00
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2017年07月06日 03:42
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脱北帰国者が語る 北の喜怒哀楽―旧ソ連に密入国(8)
駅の朝鮮人労働者と、公演で楽しむ地元の人たち

 ついに金英範の弟・アレクセイに会う日が来た。約束した時間にハバロフスク駅で会うため、私は早めにチェックアウトを済ませた。駅に着くと、意外な光景が目に入った。
大勢の労働者風のアジア人が、3、4個のダンボール箱を円形に囲んで待合室の片隅で食事をしていた。近寄って見ると、言葉やそのイントネーション、風体から北朝鮮の労働者部隊であると分かった。彼らはダンボールの箱の中からビニール袋に包まれた弁当を取り出し、めいめい食べていた。おかずは白菜のキムチ、大根のキムチ、明太の炒め物、コチュジャンという、朝鮮人丸出しの食事であった。しかし、コメは全部白米だった。特別待遇であったのだろう。
驚いたことに、彼らは朝食をとりながら酒をコップで回し飲みしていた。全員笑いながら、楽しそうな顔をしていた。
しばらくすると、掃除係の女性が来た。彼女は大きな声で朝鮮人労働者を怒鳴りつけていたが、私がはっきり聞き取れたのは二言だけ。一つは「北朝鮮の労働者」、もう一言は、「本当に悪い」という言葉だった。
団体の責任者らしい男だけは「静かにしてくれ。早く食べて駅の外に集結せよ」と命令していた。駅の待合室のコンクリートの床に座りこんで食事をしているのは、北朝鮮の労働者しかいなかった。私はその光景を見て、同じ民族として羞恥心がこみあげた。同時にかわいそうでもあり、悲しくもあった。
シベリアにいる朝鮮人労働者の大半は、原木伐採に従事していた。住宅や公共施設の建築にも雇用されていることも知っていたが、労働者の行動やマナー違反を目の前で見たのは初めてであった。労働者たちは注意してきた女性をからかうようにゲラゲラ笑っていて、怒鳴られても平気なようだった。結局、女性は呆れた表情をして立ち去った。
朝鮮人労働者は、外国に来たという誇りと自由で解放感に浸っていたと思う。お金を稼いで祖国にいる家族に送ることもできる。幸福であり、希望を持っていたと思う。
時刻表を見たところ、まだ1時間ほど待たなければならなかった。私は駅近くの大きな公園に行くことにした。公園では青年たちがローラースケートで遊んでいた。大きな銅像の前ではギター、マンドリン、バイヤンアコーディオン、バイオリンを弾く人たちがいた。彼らが演奏していたのはロシアの民謡「カリンカ」だった。
4分の2拍子の軽快なリズムに乗って、立派な体格の男性と、頭にスカーフを巻いたワンピース姿の女性が手を組んで踊りだした。するとほかの人たちもペアを組み、自然と輪になって踊りはじめた。
音楽が盛り上がってくると「ハイ! ハイ! ハイ!」と裏声で叫んで楽しんでいた。日本では見たことのない、愉快な光景だった。気づけば私も、拍手に合わせて手を叩いていた。
私は以前からロシア人はスポーツや芸術が好きな民族だと考えていたが、現地で実際にそれを確認した瞬間だった。そこで初めて会った関係であっても、音楽が流れるとみなが一つの心で楽しむ習慣は羨ましかった。
ある男性がソロで見事な歌声を披露し、群衆から拍手喝采を浴びた。私にはどのような内容の歌か分からなかったが、確かに上手だった。
ソ連のバス停では、日本とは違い、1時間以上も立って待つことが普通だった。だから一人の客がソロで一曲歌い始めると、ベンチに座ったままで、立っている人は立ったままで一緒に歌いだす。数分もすると、高音と低音の二つのパートに分かれ美しいハーモニーを醸し出す。これにも驚かされた。
私はそういうロシア人の一端を見て、長い時間を無為にすごさず、有効に利用することを知っている賢い民族であると思った。命令調で歌えという北朝鮮とは違い、芸術を自然と生活の中に溶け込ませ、心を癒しているのだろうと思った。
(つづく)

2017-07-05 5面
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