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最終更新日: 2017-07-28 08:18:42
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2017年06月28日 00:00
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脱北帰国者が語る 北の喜怒哀楽―旧ソ連に密入国(7)
ハバロフスクの街で観た戦争映画と公演

 ホテルのフロントにいた女性に金を渡し、私は電話の使い方を教えてほしいと頼んだ。すると彼女は電話番号を教えて下さいと言って電話ボックスの中に入り、小銭はあるかと聞いてきた。私は硬貨を一握り分ケースの中に差し入れた。
私がいたウラジオストクから、金英範の異母弟がいるサハリンまで、電話をかけるには、途中で1カ所電話交換所を経由しなければならないと聞いていた。そのような複雑な過程は、私の語学力ではできないと分かっていたためだ。しかもホテルでは、番号さえ知っていれば、本人に直接電話が繋がるようになっていた。
電話口に出たのは老年の女性の声だった。「どなたですか」と女性が聞くと、フロントの女性が「ここはウラジオストクです。息子さんのアレクセイ・イワノビッチ・キムさんをお願いします」と言った。そして約10秒後、電話口に男性が出た。
フロントの女性は受話器を私に渡した。アレクセイは父親が朝鮮人だったので、上手ではないもののロシア語訛りの朝鮮語を話すことができた。彼は事前に兄から具体的な連絡を2度受けていて、自分も電話を待っていたと言った。兄からは、自分の一番親しく、恩を受けた人だから、会った時は不便のないように、身の安全を守ってくれと言われたようだった。
私たちは待ち合わせの時間と場所を決め、電話を切った。そして再びチェックインカウンターに戻って1000ルーブル紙幣を女性に渡し、3階の部屋に入って安堵の息をついた。
私は心の中で成功を祈った。約束どおりディーゼル機関車に乗り、ハバロフスクに向かった。現地に到着して2日後、アレクセイに会った。サハリンからハバロフスクの路程は丸1日と、決して近くはなかった。私は彼に会うまでの2日間、ハバロフスク市内を散策し、美術館巡りや映画鑑賞をして時間をつぶした。
市内のある大きな劇場の前の宣伝ポスターに目が留まった。ソ連兵士の勇敢な闘いぶりを描写しているようだったので、チケットを買って中に入った。私がシベリアに行ったのは5月中旬、ソ連では対独戦争勝利記念キャンペーン中だったので、ドイツとの戦争を題材にした映画の上映週間になっていた。
映画のタイトルは「スターリングラード大攻防戦」だった。この戦いの概要は以前から知っていたので、映画を理解するのは難しくなかった。
第2次世界大戦初期、ドイツ軍は破竹の勢いでウクライナやソ連の西北地方を占領していった。その後、モスクワとスターリングラード(現在のヴォルゴグラード)に大軍を派遣したが、厳冬期で作戦はうまくいかず、ソ連軍の猛反撃にあってドイツ軍は敗走するのである。これがドイツ降伏の端緒になったといわれる。
つまり映画は、スターリンの指揮下にあったソ連軍の勝利を誇示する内容だった。毎週日曜日の夕方には、ソ連、東ドイツ、ポーランド、ルーマニアなど、東欧の社会主義国で製作された戦争物や反スパイ映画がテレビで放送されていた。キューバ映画も何回か観たことがある。私が北朝鮮で観たことのある作品もあった。
次の日は別の劇場に行った。その劇場ではソ連の巨匠ショスタコーヴィチが創設した国立交響楽団の公演が行われていた。公演内容は、1930年代からの独ソ戦争と、終戦後のソ連人民の勝利と歓喜、祖国再建を物語にしたものであった。親スターリン傾向の音楽と各地の民謡、民族舞踏なども盛り込まれた、約3時間半にわたる大公演であった。
途中で30分の休憩時間もあった。今でも記憶に残っている演目は、ショスタコーヴィチが作曲・指揮した「レーニングラード」(交響曲第7番ハ長調作品60)という交響曲と、男声合唱団の「勝利の丘を越えて」、男女共演の民族舞踏「勇敢なカザーク(コサック)兵」、器楽と独唱「モスクワ郊外の夕べ」、管弦楽「アムール河の波」などであった。
(つづく)

2017-06-28 5面
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