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2017年05月19日 20:22
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高麗青磁への情熱―96―

結婚生活(八)

柳根瀅
高徹・訳/馬瑞枝・画

 彼女は滂沱の涙を流した。
人生はかくもはかなく、間もなくまさ子は看病のかいもなく不帰の客となった。
いつも丸い目で私を見つめていたまさ子は、たったの一晩であの世に行ってしまったのだ。私や多くの人びとに送られて、彼女の骸は灰と化してしまった。結婚してまだ一年も経たないうちに私とまさ子は幽明を異にした。
周囲は私を思いやって、いろいろなところに結婚相手を探したが、適当な女性はいなかった。
その日も主人が私に会いに来た。
「柳さんに少し話があるから、帰りに家に寄ってくれないか」
仕事が終わって、主人の家へ出向いた。
「夕食でも一緒にしようと思って呼んだんだよ」
主人は料理をひとつよそってくれた。私は、また何の話だろうかと思いながら食事をともにした。食事が終わり、主人の奥さんが私に、
「柳さん、ご不幸があったのに、まだ挨拶ひとつもしなくてごめんなさいね」
すると横にいた主人が大きな声で、
「すんでしまったことをごたごたいうんじゃない! それでなくても心に傷ついた者に」
ふたたび静かになった。主人の声は今度は落ち着いていた。
「柳さんが大変な目に遭ってからというもの、元気のない姿を見るにつけ、ほんとうに痛ましくてならなかったよ。すぐにも慰めてあげようと、結婚の相手を探して、考えた末のことなんだが、花子との結婚はどうかね、柳さん?」
私は沈痛な口調で答えた。
「ぼくのためにそれほどまで気を遣ってくださり、ありがたく思っています。でも、朝鮮人は絶対に義理の姉や妹とは結婚しません」
「そうか、それじゃ仕方ない」
二年前にこの工場にやって来たときは、高麗青磁の釉薬調合法を学ぼうと大いなる期待を抱いていたが、その望みもいまや、はるか彼方のことのようで、思えば思うほど侘しさだけが募った。
しかし、悲観する必要はなかった。私の前途に一条の光がありこそすれ、絶望などなかった。
私は主人に、決心を打ち明けた。
「ご主人、ぼくはもう工場を辞めようと思います」
主人は、暫く困ったような表情をした。
「実に寂しい話だが、君をつかまえておくわけにもいくまい。柳さんはいつも大きな抱負と決心のある人だから、何でもすぐに成功するだろう。でも、この工場は当分の間、難しくなるな」
「はい。それもよく承知しています」
私は、数人の見習いを集めて一か月教えることを約束した。

2017-05-18 6面
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