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最終更新日: 2017-08-19 08:12:03
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2017年02月22日 22:31
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『韓国政治思想史』 朴忠錫著、 飯田泰三監修、 井上厚史訳、 石田徹訳
古代から近世・近代まで 韓国人の思想様式を網羅

 今、韓国は「崔順実シンドローム」によって喧しいが、この事件の基底にはどうも韓国独特のシャーマニズムである「巫」、いわゆる「ムーダン」が横たわっているように思えてならない。巫とは、ありていに言えばシャーマニズムのことであるが、韓国の巫の源流はシベリアにあるという。それには、韓国人の神話、死生観、禍福観、卜占、精神の根源などが宿っており、現在もなお韓国人の精神世界を支配していると言われている。
本書は「古代韓国人の思想様式」から近世・近代までを扱っているが、やはりテーマは朝鮮朱子学についてであろう。
日本朱子学が、「自然」から「作為」へと転轍した契機は荻生徂徠(1666~1782)以来だとされているが、それを思想史として確立させたのは、丸山眞男その人である。徂徠は古文辞学を唱え、かつての聖人君子の教えをそれまでの様々な解釈や訓詁などをまじえず素のままで理解しようとした。中国の春秋戦国時代に輩出した諸子百家たちの学はけっして道徳にとどまらず、きわめて人間臭く政治的作為の学だったのだ。徂徠はそこに着目し、従来の朱子学を判じて止揚する。
一方、朝鮮朱子学はどうであったのか、丸山の言う「自然」の状態から「作為」へと転轍することはなかった。李退渓(李滉。1501~70)・李栗谷(李珥。1536~84)らの「性理学」から丁若鏞(茶山。1762~1836)に進んだのはいいが「実学」の域にとどまった。丁若鏞の著した『牧民心書』を含む『一表二書』は牧民官の心得るべき提要を公にはしたが、統治の学にまで至らなかった。これには正祖(李朝25代。在位1776~1800)代が長続きしなかったことも一因であるかもしれない。ここに、日本と朝鮮の近代へ進む過程における彼我の違いの一つがあったのではないだろうか。
その理由について、著者は「韓国は歴史的に、韓国巫、神話、儒教思想、道家思想などにもとづいた『自然』主義的世界観を基調とする道徳主義が深く根を下ろしている。それに対して、日本はアジア大陸の文化・思想の影響から相対的に離れているだけでなく、日本特有の『自然』観(たとえば丸山眞男先生の『いきほひ』の観念)が軸をなしている。……儒教思想を基調とする歴史的規範の傾向が強い韓国に比べて、日本の場合には歴史的相対主義の傾向が強い……」といっているが、それは当を得た評価だと思う。(崔昌学)

法政大学出版局刊
定価=9800円(税別)

2017-02-22 6面
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